プレゼンスキルを上達させる効果的な練習方法/小学生学年別


世には、大人向けに”プレゼンテーションが上手くなる方法”についての指南書や講座が溢れているように、わかりやすいプレゼンテーションをするのは大人でも難しいものです。小学生には、なおさら大変な挑戦となるでしょう。


スキルアップのためには実践経験を積むのが良い方法ですが、日々プレゼンテーションを行っているビジネスマンと違い、小学生にはいわゆる”プレゼンテーション”をする機会、見る機会は多くありません。どのようにして、プレゼンテーションの練習をすればよいのでしょうか?


こちらでは、小学生にぴったりのプレゼンテーションの練習方法について紹介しています。日々の生活や学校の授業にあわせて、家庭でも無理なくできる方法を紹介していますので、是非ご覧ください。



家庭でできるプレゼンテーション練習法/小学校低学年~


小学生の場合、いわゆる”プレゼンテーション”をする機会、見る機会は多くありません。しかし、広義のプレゼンテーションは「相手に向けて話すこと」だと捉えることができます。低学年のうちは、プレゼンテーション練習というよりも”話す”練習に置き換えましょう


毎日でなくてもよいので、コツコツと続けることが大切です。話すテーマを決めたら、最初は短く、2文から3文、時間にしたら30秒くらいを目安に始めましょう。無理のない範囲で少しづつ長く話せるようになるといいですね。



子供にとって楽しいテーマを選ぶと子供の負担が少なくモチベーションが長続きします。例えば、”話す”テーマを、”好きなおやつ”に決めたら、一番好きなおやつについて話す内容を考え、なぜ好きか、どれくらい好きかなどをお話してもらいます。


最初のうちは「ドーナツが一番好きです」で終わってしまうかもしれませんが、そのうち「駅前のパン屋さんのドーナツが好きです。ドーナツはお母さんが買ってきてくれました。とてもおいしかったです」など、5W1H、いつ(When)どこで(Where)誰が(Who)何を(What)なぜ(Why)どのように(How)などの情報が付け加えられた詳細なお話ができるようにサポートしていきましょう。


サポートとは、ダメ出しすることではありません。「どうしてそう思ったの?」「○○が知りたいな~」など、子供に質問することで、子供自身が気づいてくれることが理想的です。もしなかなか気づいてくれない場合は「○○について言ってみたら?」など提案しながら進めてみるものいいかもしれません。



今日のテーマは何にしようと困ることがあるかもしれません。そんな場合は、月曜日は“食べたご飯について”、火曜日は“習いごとについて、”水曜日は“学校であったことについて”など、テーマメニューを用意しておくと取っ掛かりになりやすいと思います。メニューを書いて壁に貼っておいたり、番号振っておいて、さいころで決めるとゲームみたいで楽しいでしょう。


こちらのメニューは比較的スタンダードなものばかりが並んでいますが、「おとうさんからお小遣い100万円もらったらどうする?」「ポケモンがもらえるとしたらどうする?」といった楽しいテーマを選ぶと話が弾みそうです。



資料作成については、低学年のうちから無理に始める必要はないでしょう。ただし、実物が目の前にあると気分が盛り上がりますので、親子で一緒にいろんなものを見ながら、おしゃべりするのが楽しいと思います。


ただし、話す力を磨くためには、家庭だけでは限界があります。多くの子供たちにとって、「話す」実践の場は、「学校」「友達」。一番大切なのは、子供が学校が楽しい!毎日が楽しい!と感じることです。「話す力」を磨くだけでなく、親子の会話を通してお子さんの様子に目を配ってあげてください。


低学年の練習・まとめ
✔ 
日常生活のなかで「相手に向けて話すこと」を意識して
✔ 短時間のスピーチ練習が効果的 楽しみながら、続けやすい方法を親子で見つけよう



家庭でできるプレゼンテーション練習法/小学校中学年~


小学校の3、4年生では、3分間スピーチの練習がおススメです。小学校の中学年を前後に、朝のお話タイムなどを設け、テーマを決めて3分程度の短時間のスピーチをするという学校も多いようです。


3分あれば、「序文」「本論」「結論」といった3段階の構成でスピーチすることができますので、小学生にとっては少々高めのハードルです。3分は聞く方には短いですが、準備する側にとっては長く感じるものですので、事前に原稿を準備しておいた方がよいでしょう。先生によっては、事前に原稿をチェックしてくれる場合もあります。



こういった学校で行われる3分間スピーチは子供だけで完結させず、家族で取り組みましょう。具体的には、テーマについて家族で話し合ったり、原稿の推敲をしたり、お家で予行練習をしたりするのがおススメです。家族が興味を示してくれることで、子供のモチベーションが上がり、子供がより真剣に取り組んでくれるようになります。


予行演習の際には、どうやったら伝わりやすいかな?それはこういうこと?などの声掛けや質問をすることで、「相手に向けて話すこと」について子供自身が考えてくれるようになることを目標にしましょう。


あまり多くのアドバイスは必要ありません。たった一度の発表を大成功させることよりも、何度も経験を積むことで少しづつ上達することを目指した方が、子供の定着度が高いです。学校の発表の機会は、日直担当だったり、出席番号順だったりと定期的に何度も練習のきっかけができるのが嬉しいポイントです。



3年生の後半になるころには、学校でパワーポイントなどの資料作成が始まるかもしれません。しかし、発表練習に加えて資料作成をするのは子供にとっては大きな負担になりますので、最初のうちは、それほど資料作成を意識する必要はないでしょう。まずは、テーマに沿った絵か写真などを選ぶという”資料選び”が資料作成の練習になります



もしお子さんの方から、資料に手を加えた方がわかりやすいということに気づいたら、是非トライしてみてください。手を加えると言っても、印をつけるだけとか、短い文章を沿えるだけなど簡単にできるものから始めるのがおススメです。簡単な加工であっても、決して大人の方から指示することなく、子供に試行錯誤してもらいましょう。大人は技術面のサポートのみ行い、どうしたいかは子供の意向に沿いましょう。加工前と加工後を比較しながら、より分かりやすい資料を作ることが資料作成の練習となります。




学校があまり発表練習に力を入れていない場合は、練習する機会が少なくなります。そういった場合は、家庭での機会を増やすとよいでしょう。子供だけ話すのでなく、お父さんもお母さんも交えて、家族みんなが順番に話す発表会が盛り上がると思います。


定期的に開催することが決まっているものをうまく使えば、うっかり忘れてた!ということがありません。お誕生日やクリスマス、月一度の家族会議など、各ご家庭に合った方法を探してみてくださいね。



我が家では、おじいちゃんおばあちゃんとのオンライン帰省を利用しています。


ビデオ通話では、「説明するときに資料があった方がわかりやすい」「直接会う時よりも画面越しに説明する方が工夫が必要」ということに子供自身で気づいたということが大きな収穫でした。2回目のビデオ通話では、予め準備しておいた写真やノートを画面越しに見せながら、熱心に話しているところをみると、子供なりに「相手に向けて話すこと」を考えていることがわかります。


パソコンが苦手な方には、ちょっと大変かもしれませんが、かわいい孫のため頑張ってもらってください。我が家のおじいちゃんは本を参考に設定を頑張ってくれました。


孫の顔が見たい!はじめてのスマホでビデオ通話


中学年の練習・まとめ
✔ 3分間のスピーチ練習がおススメ 学校での発表の機会をうまく活用しよう
✔ 資料作成は簡単な加工からはじめよう 
✔ 子供自身で考えることが大切 大人からの指示は控えよう


家庭でできるプレゼンテーション練習法/小学校高学年


小学校を卒業するまでに、一度はプレゼンテーション発表の一連の流れを経験しておくと良いと思います。


小学校でも高学年になるとパワーポイントやポスターなどを用いたプレゼンテーション指導が本格化する場合が多いようです。地域の名産、地域の見どころ、遠足の振り返りなどの定番テーマはもちろん、学校によっては、校外学習のプランをプレゼンテーションで提案することもあるそうです。



学校での発表というのは貴重な機会ですので、十分に活用しましょう。 そのためにも、全てを学校まかせにしないで、できる範囲で家族も参加することを心がけましょう。


学校でのプレゼンテーション指導に関しては「小学生からプレゼンテーションについて学ぶ」ということだけが決められているだけで、指導法は、各自治体や学校、先生方に委ねられており、明確な規定はありません。私たち親は受け身でいると、子供が学校でどのようなことを学んでいるのか知る機会はないかもしれません。今のところ、プレゼンテーション学習には明確なゴールがなく、通知表などで評価されることもありません。意欲の高い子だけが学習し、意欲のない子は何もしなくてもやりすごせてしまうという状況のようです。



積極的に子供に関わり、子供の状況を把握しておきましょう。そのためにも、テーマについて家族で話し合ったり、資料作成や原稿の推敲をしたり、お家で予行練習をしてみてはいかがでしょうか?家での予行演習では、予行演習の際には、どうやったら伝わりやすいかな?それはこういうこと?などの声掛けや質問をすることで、本番の発表がさらにブラッシュアップされていきます。



子供への声掛けもおススメです。「今は学校ではどんなことをしているの?」という声掛けだけで、いろいろなことがわかることもあります。うちの子の場合は、資料作成に対する関心が高いことがわかりました。また、学校で作った資料を見せてもらう中で、「ここをこうしたい」という子供の理想のイメージがあったのですが、パワーポイントではできないと思い込んで諦めていたり、妥協したりしていたことがわかりました。


一つできるようになると、「本当はこれもこうしたい」がどんどん出てきます。子供の希望に沿って使い方を教えてあげるうちに、できることが増えました。使えるようになるとさらに楽しくなったようで、家でも自主的にパワーポイントを使って資料を作成するようになりました。


たった一言の声掛けで、子供の状況を把握できるだけでなく、家族が興味を示したことで、子供のモチベーションが上がり、子供がより真剣に取り組んでくれるようになり、一石二鳥だったと思います。



よりよい発表をしてほしいという親心からついついたくさんダメ出しをしてしまうという方もいるかもしれませんが、子供が苦手意識を持ってしまったり、嫌になってしまったりすることがありますので、否定的なアドバイスは避けましょう。また、多すぎるアドバイスはかえって逆効果になります。どうしても伝えたいことがある場合は、ポイントを絞って、簡潔にまとめて子供に伝えましょう。



アドバイスよりは感想や質問の方がより効果的です。「ここが面白かったよ!」「ここがもう少し詳しく知りたいから教えて!」「ここの意味がわからなかったんだけどどういうこと?」というフィードバックは、子供自身がプレゼンについてもう一度見直してみるきっかけとなります。



プレゼンテーションには、漢字のテストや算数の問題のように明確な答えを出すことがゴールではありません子供が自分で一生懸命考え、子供がベストだと思うプレゼンをすることがゴールになります。


子供をたくさん褒めてあげて褒めすぎるということはありません。できるようになったことをたくさん見つけて、褒めてあげましょう。また、興味を持ってしっかりと関わっていくということもとても大切です。子供が「また次回も発表頑張ろう」「次回もお父さん、お母さんに聞いてもらおう」という気持ちになり、モチベーションもアップします。



本番が終わったら、そのままにしておかず、親子で話し合って振り返りをしておきましょう。実際に本番を経験した子供たちは、予行演習では気が付かなかった”何か”を感じ取っているはずです。


先生やクラスメイトの反応がどうだったか、自分自身でどのように感じたか、次回はどうしたいか、などいろいろ話し合ってまとめ、振り返りノートに記録しておきましょう。また、子供の意見や考えを反映させて、次回の行動に落とし込むことができれば、さらに理想的です。


ここで注意してほしいのは、振り返りを反省会にしないということです。子供がプレゼンに苦手意識を持ってしまうと、自分にはできないと諦めてしまうかもしれません。子供自身がダメだった部分に注目しがちな場合は、頑張ればどんどんレベルアップできることを子供に伝えましょう親は、できるだけ子供が達成した部分に注目しましょう

高学年の練習・まとめ
✔ 小学校卒業までに、プレゼンテーション発表の一連の流れを経験しておこう
✔ 子供のプレゼンに親も積極的に関わろう 
✔ 子供自身で考えることが大切 大人のダメ出しは厳禁
✔ 発表後は前向きな振り返りで次回の発表につなげよう


学校によっては、プレゼンテーション指導にあまり力を入れていない学校もあるかもしれません。また、学校の指導ではもの足らずもう少し頑張りたいというお子さんもいると思います。その場合は、家庭でプレゼンテーションの機会を設けるか、プレゼン教室に通うなどプロに頼るという方法がありますので、検討してみてはいかがでしょうか。




最後に


理系学部を卒業して、理系研究員として就職した私は、学生時代から学会発表、修士号&博士号取得の審査、就職活動、就職先での企画提案などで、数えきれないほどたくさんのプレゼンテーションを経験してきました。


嫌というほどプレゼンテーションを経験していく中で、プレゼンテーションのスキルアップのためには、経験を積むしかないと実感する一方で、ただ経験を積むだけでは無意味だということも感じています 。そこで、正しい方法で適切な量をこなして上達させるためにはどうすればよいかを考え、この記事をまとめました


こちらの記事には、目安として低学年、中学年、高学年別に練習方法を紹介していますが、たとえ高学年であっても【低学年】の練習からはじめても全く問題ありません。むしろ、ちょっと簡単すぎるかな?と思えるやさしいレベルから開始することをおススメします。”できるときにできることを”を目標に無理のない範囲で継続してみてくださいね。