小学生プレゼンテーション上達術/家庭指導で大切な心得4つ


大人でも小学生でも、プレゼンテーションのスキルを鍛えるためには、実際にやってみるしかないのですが、それが効率の悪い方法だとなかなか結果に結びついていかない場合があります


こちらでは、小学生のプレゼンテーションスキルアップのための効果的な指導法について紹介しています。プレゼンテーションを嫌というほど経験してきたお母さんが、小学生の我が子を指導するために考えた実践的な方法です。 併せて、おかあさんの実体験に基づいて、この指導法で子供がグングン伸びる理由についても解説しています。


誰にでも無理なくできる方法ですので、是非お試しください。



プレゼンテーションに対する興味や関心を引き出そう!


いよいよ学校で”プレゼンテーション”の授業が開始しました。しかし、ただ何も考えることなく、授業を受けているだけでは、効果的にスキルアップをすることができません。 たいていの人がそうだと思いますが、興味や関心のないことに対しては集中力が発揮されず、なかなかスキルがアップしないものです。



私も、締め切りまでに終わらせないといけないから、次はわたしの順番だから、などというという気持ちで準備していた頃がありました。義務感で準備している間は、どうすれば良いプレゼンテーションができるかについて自分自身であまり考えてなかったように思います。


子供たちも、宿題だから、次はわたしの順番だからという”やらされ感”が大きいと、 だれかの真似をしたり、体裁だけつくろって、なんとなくやり過ごしてしまうかもしれません。子供が自分自身で考えることをやめてしまっては、何もやってもうまくいきません



子供がプレゼンに興味を持つために大切なことは”テーマ選び”です。 誰でも、「やってみたい」「知りたい」など、興味を持っていることに対しては前向きな気持ちになり、自主的に取り組むことができます。その興味を誰かと共有できたら、さらにモチベーションがアップし、飽きることなく長続きます。優等生らしい、小学生らしいテーマに縛られることはありません。「その子らしい」テーマを選びましょう


例えば、学校や受講している講座などから”地元の観光スポットの紹介”というテーマを与えられたら、家族でどこが楽しかったか、どこが面白そうかなどおしゃべりしながら選ぶととても楽しいと思います。お出かけプランをプレゼンにまとめ、家族でお出かけしてみるとさらに盛り上がりそうですね。


自由課題であれば、「これ!」とすぐに決められる子と「どれがいいかな?」と迷ってしまう子に分けられると思います。迷ってしまう場合は、たくさんおしゃべりをして、子供たちの普段生活に関わることや興味があることなどから選ぶお手伝いをしましょう。思いついたものを全て書き出した後、好きな順に並べていくというのもいい方法だと思います。「こういうことをしたかったんだ!」「こんなことが好きだったんだ!」など親子で見つけた新しい発見が、次回のお出かけや新しい習い事など何か行動を起こすきっかけになるかもしれません。



学年が進むにつれて、学校でもプレゼンテーションの指導が本格化してくると思います。子供には、ただ授業に真面目に取り組みなさいというのではなく、必ずその理由についてもあわせて伝えてあげることが大切だと考えています。授業でするということは、プレゼンテーションは大切なんだろうな~と子供たちもぼんやりと気が付いていると思います。そのぼんやりとしたイメージを具体化してあげるのが親の役目です。プレゼンテーションはどのような場面で役に立ってきたか、上手だとどんないいことがあるかなど、具体的な事例や経験談を盛り込んで、プレゼンテーションの大切さを伝えてあげましょう



日々プレゼンテーションを行っているビジネスマンと違い、小学生の場合、いわゆる”プレゼンテーション”をする機会、見る機会は多くありません。しかし、広義のプレゼンテーションは「相手に向けて話すこと」だと捉えれば、誰かとおしゃべりすること、学校で発表をしたり聞いたりすること、先生のお話を聞いたりすることもプレゼンテーションの一環と言えそうです。


また、テレビやYou tubeでは、「相手に向けて話すこと」のプロフェッショナルがたくさん出演しています。「この人の話はおもしろいね」「こうすればわかりやすいね」と親子で話し合うこともプレゼンテーションに興味を持つきっかけになるかもしれませんね。


低学年など、まだプレゼンテーションのことを理解できないうちは、日常生活の中で「相手に向けて話すこと」の大切さを伝えることも重要だと思っています。


まとめ
✔ 楽しいテーマを見つけて、親子でたくさん話そう!いろいろ体験しよう!
✔ プレゼンテーションの大切さを伝えて、子供に興味を持ってもらおう!

✔ 日常生活を通して「相手に向けて話すこと」の大切さを伝えることも効果あり◎


プレゼンテーションは頑張れば必ずうまくいく!


私は、プレゼンテーションの経験が浅かった大学生の頃、”私はプレゼンがうまくできない”という苦手意識を強く持っていました。当時は大学生とはいってもプレゼンテーションの実践経験が少ない人が多かったので、わたしだけ特別というわけでもなかったのですが、そんなことを考える余裕もなく、できない自分を隠すために体裁を繕うことばかり考えていたように思います。


うまくできなければ、一から学ぼう!という積極性を持ち、上手な人を真似てみたり、プレゼンに関わる参考書などを読んで対策を立てたりすれば良かったのですが、当時は、冷静に考えることができず、”何もせずに心配しているだけ”という無駄な時間を過ごしていました。


このように、苦手だと思っていると、判断力が低下して、どうすればよいかわからなくなってしまうことはよくあることだと思います。



たくさんのプレゼンを経験をしていく中で、いつもプレゼンテーションが上手な先輩が準備不足で今回のプレゼンは今一つだった、ということや、その逆に、新人の私が気合の入ったプレゼンをして大成功だったということもありました。


こういう経験の中で、プレゼンテーションというものは、事前準備で8~9割方決まることを実感しました。しっかりとした事前準備は、必ず良いプレゼンテーションへと繋がっていきます。つまり、プレゼンテーションは【やればできる】のです。


プレゼンが事前準備次第とわかってからは、心配しているばかりで何もしないという無駄な時間は消えました。また、プレゼン前は入念な事前準備と確認をするというくせがついたのは、その後大いに役に立ちました。



初心者の小学生が、自分自身のことを”発表が苦手だ”とか、”プレゼンテーションが苦手だ”と思い込んでしまうことはよくあることだと思います。小学生はみんなプレゼンテーションの初心者です。人前で話すことや資料作りなど最初から上手にできるわけでありません。「私はできない」という間違った苦手意識を持ってしまうと、「どうせできないんだから」と前向きな気持ちで取り組むことができません



そうした思い込みをなくすために、プレゼンは頑張れば必ず上手にできるということを子供に伝えておくことが大切だと思います。頑張ってもうまくできない、やっぱり苦手だ、など子供が弱音をはいてしまったら、できるようになったことに目を向け、たくさん褒めてあげると子供の苦手意識も少しづつ払拭されていくと思います。


まとめ
✔ 苦手意識が上達の妨げになる

✔ プレゼンは頑張れば上手にできると子供に伝えよう

子供の負担のない方法で練習しよう


プレゼンテーションには、実際に手を動かして体感で学んでいくことがたくさんありますので、スキルアップの為には、実際にやってみるしかありません。小学生のうちに経験しておくと後々きっと役に立つでしょう。


それでは、プレゼンテーションに関わる作業とはどのようなものでしょうか?下記に、私が仕事でプレゼンテーションを行う場合の手順を簡単にまとめてみました。
1.論点の概要を整理する(ノート、Wordなど)
2.発表資料をつくる(Power Point)
3.原稿を作成する(Word)
4.プレゼンの実演練習をする(原稿ありのリハーサル)
5.実演練習をもとに原稿&発表資料を何度か修正 →最終案へ
6.原稿なしで発表できるように練習(原稿なしのリハーサル)
7.本番


かなりのボリュームですね。しかも、重要なプレゼンの場合は、長時間費やして準備しなければなりません。



大きな負荷がかかる一連のプレゼンテーション作業に初心者がいきなり取り組むのは大変です。特に、子供に突然負担の大きい課題を与えると、手を抜いたり投げ出したりしてしまうことが多いです。プレゼンテーションは難しいという苦手意識を持ってしまっては、逆効果になってしまいます。



作業を分割すれば、負荷を軽減することができます。例えば、プレゼンテーションの内容を作業別に分けて単純化すると、、、

① 話す(発表)
② 資料作成


つまり、プレゼンテーションの作業は、①話す、②資料作成 の二つだけです。さらに、①話す②資料作成の二つの作業も細分化して、小さなステップにします。



【①話す】ためには、テーマ選びも大切な要素です。テーマ選びは、堅苦しく考えることはなく、日ごろから、好きなこと、得意なこと、将来の夢、苦手なことをたくさんおしゃべりするだけOKです。子供は”テーマ選び”というと難しく考えてしまいがちなので、○○ちゃんはあれが好きだったよね?これが得意だよね?と助け舟を出して上げてください。学校などでスピーチの課題が定期的に出されるようであれば、「ネタ帳」を作っておくのもいい方法だと思います。



【①話す】ためには、スピーチ練習も必要です。最初は短く、2文から3文、時間にしたら30秒くらいを目安に始め、無理のない範囲で少しづつ長く話せるように頑張りましょう。長くなったら、原稿を作ってみるものいいですね。実際に話す(発表)練習をしているうちに、どうやったら伝わりやすいかな?それはこういうこと?などの声掛けや質問をすることで、「相手に向けて話すこと」について子供自身が考えてくれるようになることが目標です。



学年が上がるにつれて長い時間話すことができるようになってくると思います。話す時間が長くなってくると傍らに資料があった方が話しやすい、相手に伝わりやすい、と子供たちの方から気づいてくれるかもしれません。この他者目線への気づきが【② 資料作成】の練習の第一歩となります。



話すときに必要な資料として、お子さんに適切な写真や絵を選ぶのも良い練習となります。そして、資料選びができるようになったら、資料作成に進みましょう。印をつけるだけとか、短い文章を沿えるだけなど、簡単にできる資料作成から始めるのがおススメです。ちょっとした加工ができるようになったら、思い切って数枚程度の資料作成に挑戦してみるのもよいかもしれません。タイトルを除いて3枚のパワーポイントであれば、「序文」「本論」「結論」といった3段階の構成の資料を作成することができます。



①話す、②資料作成という作業をする上で、最も大切なのは、子供が主体的に考えることです。どんな簡単な作業でも、大人の方から指示することなく、子供に考えて試行錯誤してもらいましょうプレゼンテーションには、漢字のテストや算数の問題のように明確な答えを出すことがゴールではありません子供が自分で一生懸命考え、子供がベストだと思うプレゼンをすることがゴールになります。


そのためにも、精神面&技術面のサポートが必要です。つまり、✔子供の作ったものに興味を示して、励まして、褒めて、子供のやる気をアップさせる、✔パソコン、ソフトの使い方などのサポートを行い、子供たちが楽しく考えられる環境づくりをしてあげてくださいね。


プレゼンテーション学習では、「主体的に考える」という作業が最も大切です。知識・技能にこだわることはありませんが、知識・技能面は「わかった」「できた」ということが目に見えてわかりやすく、達成感を得られやすいという利点があります。子供の負担にならないように細切れでOK、順番にこだわることもありません。子供のモチベーションアップのためにうまく活用してくださいね。


まとめ
✔ 作業やステップを細分化して練習しよう

✔ できることから少しずつでOK
✔ 子供自身に考えてもらうことを重視しよう



プレゼンテーションの本質・子供の主体性と想像力に注目しよう!


プレゼンの経験が豊富な大人の中には、「こうしてあげたい」「こうなって欲しい」という親心からついついと言い過ぎてしまうことがあるかもしれません。しかし、多すぎるアドバイスによって、子供が考えることをやめてしまう場合がありますので、気をつけましょう。



子供たちが向き合う課題には、①たった一つの答えを導き出すもの②答えを自分で考え、作り上げていくもの 以上の二つがあると思います。



漢字テストや計算問題など決まった答えが一つだけ導き出せる課題です。テストをすればはっきりとした点数が出ますので、習熟度がわかりやすいのが特徴です。


しかし、このわかりやすさが仇となり、決まった答えを導き出すことだけが学習だと思い込んでいるお子さんが多いのではないでしょうか。確かにテストで100点をとるとうれしいし、みんなから褒めてもらえるし、通知表の成績も上がります。解答通りに答えて、良い点数をとることが一番大切だと思ってしまうのも仕方がありません。



以前、地元の小学校で”窓”をテーマとした工作展が開催されていたのですが、8~9割くらいの児童が動物園ばかりを作っていることにとても驚いたことがあります。その後、図工の教科書に”例”として動物園が取り上げられていることを知りました。多くの児童が教科書が”正解”だと思ったのか、とりあえず作ればよいと思ったのか、そのどちらかだと思います。


確かに、初心者のうちは、お手本に習うのも悪いことばかりではありません。とりあえず、カッターの使い方、糊の貼り方など「知識・技能」は学べるからです。 しかし、「お手本に習う」「上手につくる」ことだけを目標としていると「考える機会」は失われてしまいます


図画工作だけでなく、プレゼンテーション学習も、答えを自分で考え作り上げていく課題です。テストで100点をとることを目標に頑張っている子ほど、このような課題に遭遇すると、どうすればよいかわからなくなってしまうということがあるようです。


自分で考えて作り上げていくという作業に慣れていない、答えがあると思い込んでいるので作り上げるという発想がない、ということが原因でしょう。



自分のプレゼンで聞き手に訴えかけ行動を促すことが、プレゼンテーションの本来の目的です。聞き手に興味を持ってもらうには、そこに新しい発想や発見がなければなりません。新しい発想や発見は、自分で考えたり、行動したりしなければ生まれません。そして、それに対する自分の意見を伝えなければ、聞き手の気持ちを動かすことはできません。



良いプレゼンテーションのためには、「主体的に考える」ことが不可欠です。しかし、「主体的に考える」ことに慣れていない子供たちに、大人の考えや方法を押し付けてしまうと、子供たちは、それが正解だと信じるようになります。正解を求めて、大人の理想像に近づこうとするでしょう。そして、褒められたいという気持ちから、大人が喜びそうなテーマを選んだり、教科書的な考えを述べたりするようになるかもしれません。話し方や資料の作り方などの知識・技能ばかりに気を取られるようになるかもしれません。


確かに、良い印象を与えることも大切なのですが、間違った方向で「良く見せる」ことにこだわると、「こうしたい」「こう思う」といった自分の考えや希望を見失ってしまう場合があります。最悪の場合、一見優秀そうに見える「その子らしさがない」プレゼンテーションになるかもしれません。上手にできたとしても、話し手も聞き手も面白かった!!という満足感は得られないのではないでしょうか。



子供たちには、自分で考えた発想や発見をプレゼンしてほしいと思います。そのためにも、私たち大人は、子供たちから考える機会を奪ってしまうような否定的な言動は控えなければなりません。


プレゼンテーション学習に限らず、「子供が主体的に考え、自分なりの答えを作り上げていく」という作業は大切です。小学生の時から、うまくやるということにこだわる必要はないと思います。また、「知識・技能」は後からついてくるものですので、必要以上にレベルにこだわることはないと思います。それよりも、「自分で考えて、作り上げた」ことに対してたくさん褒めてあげましょう


まとめ
✔ 子供を否定しない
✔ 知識や技能は後からついてくる
✔ 「自分で考えて作り上げた」ことを評価して!


小学生のプレゼンテーションスキルアップ指導・最後に

私自身小学校のころは、「知識・技能」が勉強の主たるものだと考えていました。残念なことに、そのまま何も気づかず、ずいぶんといい大人になるまで、自分なりの答えを作り上げていくことに対する意識が薄かったように思います。


しかし、大学生や社会人になると一転、多くの場面でプレゼンテーションを経験することになりました。OJT(職場内訓練)と言えばかっこよく聞こえるかもしれませんが、実際のところは、手探りのような状態で何度も本番を迎えながら、プレゼンテーションについて学んで行くことになりました。わたしのように事前の心構えも予備知識もないスタートしてしまうと、知識・技能を気にしすぎたり、無駄な心配や苦労をするなど、間違った方向に労力を費やしてしまうことがあります


新しい学習指導要領では、プレゼンテーションだけでなく、どの教科も「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の資質・能力の3つの柱で再整理されており、学校でも「主体的に考え、自分なりの答えを作り上げていく」能力を育てようとしていることがうかがえます。


しかし、こういった能力の習熟度はわかりにくい上、現在の小学校ではテストや通知表で評価されることもありません。評価されなければ、「主体的に考え、自分なりの答えを作り上げていく」ことの大切さを理解することは難しく、中には、体裁だけつくろってやりすごしているという子供たちもいるのではないでしょうか。


しかし、プレゼンテーションの本質は”中身”ですから、本来は「主体的に考え、自分なりの答えを作り上げていく」ということに最も力を注がなくてはなりません。そこで、子供たちには本来あるべき姿で頑張ってもらうためにはどうすればよいかを考えながら、この記事をまとめました。


子供たちが「主体的に考え、自分なりの答えを作り上げていく」ためには、

✔ 興味あることを見つけること
✔ 自分に自信を持つこと
✔ 自分らしく考えること


が大切だと考えています。


将来、子供たちが立ち止まってしまわないためにも、私たち親は、技術面をサポートしながら、余計な不安を取り除き、子供がたくさん考えられる環境を作ってあげることが必要なのではないかと考えています。





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【総則編】小学校学習指導要領(平成29年告示)解説