これからの小学校教育の変化とは?ICT教育環境変化とプログラミング必修化


平成29年3月31日に学校教育法施行規則の一部改正と小学校学習指導要領の改訂が行われました。情報活用能力に関する改定のポイントは①ICT教育環境の充実 ②プログラミング教育必修化 の二つです。


これからどのように小学校の教育が変化していくのでしょうか?


こちらでは、①ICT教育環境の充実 ②プログラミング教育必修化 の二つに注目して、今後の学校教育、改定に至った経緯などについてまとめています。




新学習指導要領改定の目的とは?


平成29年3月31日に学校教育法施行規則の一部改正と小学校学習指導要領の改訂が行われました。改訂の方向性は、『予測できない変化を前向きに受け止め、主体的に向き合い・関わり合い、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となるための力を子供たちに育む学校教育の実現を目指す。』ということになっています。


この中で表現されている、“予測できない変化”、とはどういうことでしょうか?
文部科学省の資料(小学校プログラミング教育の趣旨と計画的な準備の必要性について)では、英オックスフォード大学で人工知能などの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授の論文「雇用の未来」の分析結果や、人工知能研究の世界的権威レイ・カーツワイル氏が提唱する2045年問題を引用し、”予測できない変化”について説明されています。


「雇用の未来」によると、米国労働省のデータに基づいて、702の職種が今後どれだけコンピューター技術によって自動化されるかを分析した結果、「今後10年~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高い」という結論になりました。また、2045年問題とは、人工知能自体がさらに優れた人工知能を作り出し、人間の脳では予想がつかない未来が到来する状態を指しています。


確かに、遠隔診療システム、医療ロボ、介護ロボ、ドローンを使った自動運搬システム、自動運転システムなど、現在さまざまな技術が進んでいます。このまま順調に自動化がすすめば、人間しかできない新しい発想や価値を生む以外の仕事は、ロボット・機械がするようになるかもしれませんね。


さらに、今の私たちには予測できないことも十分起こりうることだと思います。50年前に、一人一台パソコン、スマホ、オンライン授業、テレワークなど誰が予測できていたでしょうか?


”予測できない変化”を前向きに受け止めるためには、人間しかできない新しい発想や価値を生むことができる人に子供を育てていく必要がありそうです。


これからの将来を担う子供たちには、よりよい社会と幸福な人生の創り手となってもらうため、学校の教育環境が変化していきます。


新学習指導要領・情報活用能力についての改定のポイント



平成29年3月31日に学校教育法施行規則の一部改正と小学校学習指導要領の改訂が行われました。こちらでは、情報活用能力についての改定ポイントについてまとめます。


新学習指導要領において、情報活用能力は、言語能力や問題解決能力と同様に基盤となる能力とされています。 つまり、小学生では、読み書き計算などと同じくらい、情報活用能力が大事!!ということになります。時代は大きく変わりましたね。


それでは、小学生は、”情報活用能力”として、どのような能力を身に付けるべきなのでしょうか?そのために、どのような環境整備と学習指導が行われるのでしょうか?


以下は、小学校学習指導要領(平成29年告示)解説総則編の抜粋です。

『言語活動や体験活動、ICT等を活用した学習活動等を充実するよう改善するとともに、情報手段の基本的な操作の習得やプログラミング教育を新たに位置付けた。』

ICTとは「Informationand Communication Technology」の略称で、「情報通信技術」のことです。具体的には、情報処理に加えて、インターネットやSNSの活用などの情報通信に関連する 技術・産業・設備・サービスなどを指しています。最近よく聞く、「ICT教育」は情報処理、情報通信を活用した教育方法のことになりますね。


要するに、ものすごくおおざっぱに要約してしまうと、コンピューター(パソコン、スマホを含むなどの電子機器)を活用した教育=「ICT教育」ということになります。


つまり、『ICT等を活用した学習活動等を充実するよう改善する……』は、”これからは学校でもパソコンを使って勉強します”ということ。そして、後半の『情報手段の基本的な操作の習得やプログラミング教育を……』は、“基本的なパソコン等の電子機器を使いこなせるようになりましょう。さらに、受け身ではなく、積極的に活用する力を身に付けましょう。”ということのようです。積極的に活用する力というのが、プログラミングです。


大学や企業では、企業や大学では一人一台があたり前となった今、パソコンが使えた方が、子供たちの将来に役に立ちます。その上、授業や課題の効率もあがるでしょうし、資源も無駄になりません。また、プログラミングができれば、WEBサイトやサービスの開発、スマホアプリの開発、パソコンソフトの開発、家電製品やロボットの自動化の開発などできることがたくさんあります。


爆発的にパソコンが浸透していったのは1995年のWindows95発売以降だと言われています。同時にインターネットが目覚しく進化し、家でもパソコンを持つ人が増え始めました。今は、さらにスマホ、タブレットの時代。世の中に比較すると、学校は遅すぎたくらいですね。今後、国の積極的な促進と支援活動によってその距離が縮まることを期待しています。


ICT教育環境整備とプログラミング教育必修化に至った背景とは?


平成29年3月31日に学校教育法施行規則の一部改正と小学校学習指導要領の改訂が行われました。情報活用能力に関する改定のポイントは

①ICT教育環境の充実
②プログラミング教育必修化
以上の二つです。


なぜ今このような改定が行われたのでしょうか?
こちらでは、改定に至った背景についてまとめています。


文部科学省の資料によると、このような改定に至った理由として、
「今後10年~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高い」
という分析結果がでたことなどが挙げられています(小学校プログラミング教育の趣旨と計画的な準備の必要性について)。




図の出典:「IT人材需給に関する調査(概要)」(経済産業省)


確かに、時代の流れ云々いろいろ理由があるのは当然のことと思いますが、それに加えて、上記の資料には触れられていない理由もあるようです。それは、今後のIT人材(注)がかなり不足する試算がでたこと。
経済産業省の2019年の資料(IT人材需給に関する調査)によると、2030年には130~192万人の人材の需要が見込まれ、人材不足が、最低でも16万人、最悪のシナリオでは79万人に達するとか!!



将来のIT人材不足は、日本だけの問題ではありません。アメリカの2017年の調査(More Teachers、Fewer 3D Printers: How to Improve K–12 Computer Science Education)によると、コンピューターサイエンスの求人が50万もあったそうで、この数は、2016年のアメリカのコンピューターサイエンスの学位取得者の10倍。需要の高さと人材不足がうかがえますね。ホワイトハウスは、K-12(小学校〜高校)でのコンピューターサイエンス教育を改善させるため、毎年2億ドルの資金を拠出するとのこと。


コンピューター整備率が日本よりも10年以上も進んでいるアメリカでこんなに人材不足が心配されているとは、驚きです。日本はもっと大変なことになりそうですね。


将来、優秀な人材を確保するために、今からすそ野を広げておかないと間に合いませんね。つまり、ICT教育環境の充実とプログラミング教育必修化に至った理由は、「人材確保のため」ということになりそうです。


(注)ITは「InformationTechnology(情報技術)」の略称です。ハードウェアやアプリケーション、インターネットなどの通信技術、インフラといった、コンピュータやデータ通信に関する「情報技術」そのものを指します。ICTとITは、ほぼ同じ意味の言葉ですが、ICTは情報を伝達することにより重きを置いた言葉になります。経済産業省では通信技術そのものを扱うことが多いので「IT」を用いています。文部科学省では情報処理、情報通信を活用した教育環境について言及しているので「ICT」を使っているようです。


ICT環境整備のための国家プロジェクト・GIGAスクール構想とは?


義務教育において、従来、子供たちが身に付けるべき基礎能力は、読み書き、計算などでした。さらに、それに「情報活用能力」を加えましょうということになり、今後日本のICT教育環境はどんどん変化していきます。


そのICT教育環境整備を推進するもととなっているのが、国のプロジェクト”GIGAスクール構想”です。GIGAとはGlobal and Innovation Gateway for Allの略。


GIGAスクール構想とは、令和スタンダードとして、1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するという国のプロジェクトです。


下記に示したのは、日本の学校における主なICT環境の整備状況の変化をグラフ化したものです(小学校、中学校、高等学校など全学校種を合わせた結果)。こちらのグラフによると、日本の2020年のコンピューター整備率は、4.9人/台ですから、大きな進歩ですね!


図の出典:「令和元年度学校における教育の情報化の 実態等に関する調査結果(概要)」(文部科学省)


ちなみに、うちの子の学校の2020年9月の頃の状況は、子供たちが使えるパソコンは、パソコン部屋にある共用のノートパソコン。全校生徒の人数とパソコンの台数から、大体15人で一台を共有している計算でした。ところが、その後、各教室に電子黒板付きプロジェクター、実物撮影機が整備されました。また、2021年4月から一人一台、学習用パソコンが導入されました!パソコンは、タブレットとしてもしようできる脱着型のLenovoのパソコンで、キーボード装着時の重さが1.1キロ、サイズは10インチくらいのコンパクトなものです。


また、パソコン整備と同時に、パソコンを充電するための充電施設を整備する、安定的に稼働するネットワーク環境を確保する、児童が安心して情報手段を活用できるよう情報機器にフィルタリング機能の措置を講じる、個人情報の漏えい等の情報セキュリティ事故が生じることのないよう対策を講じる、など、設備の整備、ネットワークの構築や情報セキュリティの確保など、、、数々の整備も現在は整ってきたようです。


GIGAスクール構想は国家プロジェクトではありますが、文部科学省が全国の学校に対し提示しているだけで、あくまで主体的に進めていくのは各自治体となります。各学校、各地域の特色が現れそうですね。ただし、GIGAスクール構想を考慮した各社の提供メニューを見る限り、どの学校でも、軽くて持ち運びに便利なノートパソコンやタブレットを使っているようです。


親としては、視力の低下が心配なので、大きな画面のパソコンを使ってもらいたいところですが、パソコンを持って家と学校を行き来すること、価格のことを考慮するとこういった小型で安いモデルとなってしまうのかもしれません。


最後に


将来を担う子供たちによりよい社会と幸福な人生の創り手となってもらうため、また、将来のIT人材の確保のため、情報活用能力は、言語能力や問題解決能力と同様に基盤となる能力となりました。現在、新学習指導要領に基づいた子供の教育と環境整備が整いつつあります。


文部科学省のHPには、”教育の情報化に関する情報は、文部科学省から随時発信していますが、学校を取り巻くICT環境は急速に変化しています。学校設置者における担当者の皆様におかれましては、……引き続き注視願います。”との文言もあり……”子供の教育”もICT環境変化に対応して、今後どんどん変更される可能性もありそうですね。親として引き続き注視していく必要がありそうです。






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小学校プログラミング教育の趣旨と計画的な準備の必要性について
マイケル・A・オズボーン「雇用の未来」
小学校学習指導要領(平成29年告示)解説総則編
文部科学省:小学校プログラミング教育の趣旨と計画的な準備の必要性について
総務省:IT人材需給に関する調査(概要)
More Teachers、Fewer 3D Printers: How to Improve K–12 Computer Science Education
GIGAスクール構想の実現について(文部科学省HP
GIGA スクール構想の実現へ(文部科学省 資料)